研究概要 |
コドン23のプロリンがヒスチジンにおきかわった(P23H)と、コドン334で終了となる(S334ter)の2種類のトランスジェニックラットを用いて、毛様神経栄養因子(CNTF)を硝子体腔に投与し、組織学的、電気生理学的に網膜変性阻止効果を調べた。(P23H)については3つの系(line 1,2,3)、(S334ter)については5つの系(line3,4,5,7,9)が得られているが、そのなかでも変性速度の遅い系である(P23H)2および(S334ter)9を用いた。(P23H)に比べて(S334ter)はCOOH末端部の15個のアミノ酸の消失によりshut offができにくくなるため、光刺激後の回復が遅れ、組織学的変性度に比して電気生理学的変性度が強い。(P23H)2ラットのP40,P70,P120においてCNTFを投与したところ、ERGではb波が-1.1 log cd m^<-2>において109.2%、+0.9 log cd m^<-2>において62.9%、a波が+0.9 log cd m^<-2>において48.9%回復するのが確認された。一方、(S334ter)9ラットでも、b波が-1.1 log cd m^<-2>において83.9%、+0.9 log cd m^<-2>において43.5%、a波が+0.9 log cd m^<-2>において82.1%回復するのが確認された。組織学的検索では(P23H)2ラットで外顆粒層の厚さの増加が認められたが、(S334ter)9ラットではもともと組織学的変性度が軽度なため明らかな変化は認められなかった。副作用についても十分に検討した。白内障は約25%に認められたが、網膜下での新生血管の発生はほとんど認められなかった。
|