研究概要 |
目的:我々はこれまでにパーキンソン病の治療に用いられているL-dopaが眼組織にどのような影響を与えるか培養牛網膜色素上皮細胞(RPE)を用いて研究してきた(Pigment Cell Res.7:145-151,1994)。L-dopaが発生するスーパーオキサイドはRPEに細胞毒性を発揮し,細胞周期に対してもメラニン顆粒を有するものと有しないものとで異なる影響を与えることを報告した。L-dopaはカテコールアミンであり,これらのRPEへの影響が一酸化窒素(NO)も関与している可能性がある。今回,L-dopaがNOを発生するか電極法により調べるとともに,有色および白色ラットの硝子体膣に注入し、眼組織への影響を組織病理学的に観察した。 方法:L-dopa(5,29.9,152.7,79.4,249 μM)をDulbecco's Modified Eagle mediumに加え,in vitroで発生するNOを電極法で測定した。In vivoの実験系として20μlPBSとL-dopa(10,20μM)を白ラット(Wistar)と有色ラット(Dark Agouti)の硝子体腔に注入し,2-4日後に眼球を摘出した。眼球より光顕用切片を作製し,HE染色を行った。 結果:発生するNOはL-dopaの濃度に比例して増加していた。NO消去剤であるCarboxy-PTIO(249μM)(2-4-Carboxyphenyl-4,4,5,5,tetramethyl-imidazole-1-oxyl 3-oxide)はL-dopa(249μM)が発生する電流を64%低下させていた。In vivoの実験系では,脈絡膜,毛様体血管の拡張が認められ,有色と白色ラットの比較では有色ラットの血管拡張が高度であった。 結論:L-dopaはNOを発生し,L-dopaによる脈絡膜,毛様体の血管拡張はメラニン顆粒の有無と関連していた。
|