研究概要 |
平成11年度に網膜培養系で得られた神経変性抑止因子、神経再生促進因子BDNF(brain-derived neurotrophic factor)、CNTF(cilially neurotrophic factor)をもちい生体系にてその効果を検証した。実験動物ラットの網膜神経節細胞はあらかじめDiIにて蛍光標識して検討に用いた。麻酔下で眼窩内で片側の視神経を完全に切断し、両端をcollagen gelを封入したシリコンチェーブ内に留置し約2週間飼育した。硝子体注入:ガラス微小管または30G注射針をもちいて硝子体腔に変性抑止因子、再生促進因子を注入。視神経注入:移植されたシリコンチューブ内にcollagen gelと共に変性抑止因子、再生促進因子、培養されたグリア細胞等を注入した。眼球を摘出後、網膜を単離し、標識された神経節細胞を蛍光顕微鏡にて観察、その生存数を計測した。さらに動物を潅流固定後、視神経-視神経接合部の組織標本を作成し、再生神経束を観察し、さらに変性・神経再生に係わる種々の物質(c-jun,c-fos,GAP-43,L1,etc.)の局在を免疫組織染色にて検証した。再生軸索がシリコンチューブ内の視神経の接合部位を越えて上丘に向かうかどうかを検討するために別の蛍光色素fast blueを接合部より遠位側の視神経または上丘に注入し、再生した神経節細胞を再標識し、蛍光顕微鏡下で二重染色された神経節細胞数を観察、細胞数を計測した。その結果、いずれのfactorも培養系で得られた結果と同様に生体系においても網膜神経節細胞の細胞死の抑止、軸索再生促進因子として作用することが確かめられた。また、われわれが新たに見いだした肝由来神経活性化因子や他の神経再生促進因子が同様に神経節細胞の変性を抑止、軸索再生を促進し、視覚機能の回復に役立つ可能性を探求する予定である。
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