研究概要 |
発情期の雌C57BL/6NJclマウスと雄マウスを一晩同一飼育箱で飼育し,翌朝,腟栓のみられた雌を妊娠0日とした.妊娠10日から出生直前の妊娠18日のいずれかの日に,母獣マウスを屠殺・開腹して,胎仔を取り出した.実体顕微鏡下で外形観察ののち眼部のみの組織片として,4%パラフォルムアルデヒド液に直ちに浸漬・固定した.約1週間浸漬・固定後,エタノール系列で脱水,キシレンで透徹後,パラフィンに包埋し,厚さ4μmで薄切して,眼部の連続切片を作成した.脱パラフィン,水和ののち,組織切片中のアポトーシス検出はterminal transferase-mediated deoxyuridinetriphosphate(d-UTP)-biotin nick-end labeling(TUNEL)法を用いた.その後,核の対比染色として,ヘマトキシリン染色あるいはメチルグリーン染色を施した.アポトーシス制御因子の一つとして,ヒアルロン酸に着目し,ヒアルロン酸結合蛋白法を用いて,ヒアルロン酸の眼球発生における局在も検討した.すべての染色した切片は,光学顕微鏡で詳細に観察した. 正常発生眼球および自然発生の先天異常眼を比較した結果,アポトーシスの異常により胎生裂閉鎖不全が成立すること,および,ヒアルロン酸の過剰な分布によりアポトーシスが抑制されて水晶体胞分離不全が成立することを解明した. 臨床的には,眼先天異常の一つであるPeters奇形の37例,定型的コロボーマの72例を検討し,その合併眼異常,および,全身異常が神経堤細胞の発生異常で惹起されることを報告した. 今後も,マウスを用いて眼正常発生ならびに眼先天異常の成立過程を,形態形成制御因子の面からさらに解明する予定である.
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