研究概要 |
直腸肛門奇形は新生児外科的疾患の中で最も頻度の高い先天異常で,特に中聞位型及び高位型では排便に関与する筋肉群の発達が悪いために,術後も排便管理に支障を来すことが多い.また,その発生過程は未だ十分に明らかとされておらず,本症の治療や予防において病因論的な根拠は生かされていないのが現状である.本研究では,C57BL/6妊娠マウスにEtretinate(合成ビタミンA)を投与して作成した直腸肛門奇形のモデルマウス胎仔を用いて,直腸肛門奇形発生のメカニズムを解明するための実験的検討を行った.そして,直腸尿道痩を中心に,排便機能に関して重要とされる内外の肛門括約筋の発生及び発達過程に発現する細胞増殖と細胞死を詳細に検討した.その結果,Etretinateを妊娠早期に投与するほど,重症の直腸肛門奇形の発生がみられた.また,直腸肛門奇形の病型もより重篤なものとなることが示された.そして,直腸肛門奇形の発生過程においては,尿直腸中隔の発育の障害を指摘できなかった.むしろ,Etretinateを妊娠11日目に投与した直腸肛門奇形マウス胎仔において,総排泄腔膜に細胞増殖が認められず背部尾側に過剰な細胞死が認められたことから,中胚葉系の細胞が細胞死することで肛門を形成する場を失ったことが直腸肛門奇形の発生に関与している可能性が示唆された.また,これは脊髄系の異常にも関与している可能性があると考えられた.しかし,新しい治療方法に結びつけるためにはさらに病因論を深く追求する必要があると思われる.
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