研究概要 |
Prefabricated flapは,移植した血管束につながる微小血管と皮膚の間に創傷治癒過程により新生血管が形成される現象を利用している。このように解剖学的に存在しない血管系を二次的につくり,皮弁として利用するユニークな方法であるが,臨床応用するには静脈還流が悪いという問題点もある。その原因は,移植した血管柄の動脈から流入した血液が血管柄の静脈に還流するだけではなく皮下の静脈に還流するためである。 本研究では,遺伝子組み換えヒト型塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor : bFGF)をprefabricated flapの作成に応用し血行が安定したprefabricated flapを作成した。 (1)われわれのラットを用いたprefabricated flapの動物実験モデルにより,bFGFのprefabricated flap作成における効果を検討した。 (2)血管茎を移植後1週間目と2週間目の2回,bFGFを各々lOμg(1ml)ずつ血管柄付筋肉片を移植した腹部正中中央の肉様膜部に注射した。 (3)皮弁の生着率は90.4%〜100%(平均95.4%)と拡大した。(bFGF非投与群と比較して有意差が認められた。Wilcoxon test, p=0.0051) (4)Microangiographyで拡張した静脈網の形成が認められ,bFGFによる血管新生効果と考えられた。このbFGFは外用剤として褥瘡・皮膚潰瘍に適応が認められた製品であるためprefabricated flapへの臨床応用の可能性も高い。本研究の結果からbFGFのprefabricated flapへの応用で安定した血行動態を得ることができ,Prefabricated flapの新たな展開へ重要な示唆を与えるものと考える。
|