研究概要 |
ラットの頬髭から単離された細胞から旋回培養法および浮遊培養法を用いることで、in vitroで毛包組織の再構築を行うことができたが,十分な成長毛は得られなかった。そこで、移植試験を行うことによりin vivoの状態で分化を促進し、毛包の再構築を行う実験をおこなった。一連の研究から胎仔期の単離した細胞からの毛包組織の再構築を行うことが確認できたが、さらに成体の細胞で可能かどうか,また長期の移植観察を行うことで、さらに分化、成長した毛包の発毛がえられるかどうかを検討した。胎生16日目の頬髭を採取し、trypsinをもちいて、細胞を単離。得られた細胞を旋回培養用のmediumで細胞浮遊液とした。さらに約20時間、Rotary shakerを用いて、旋回培養を行った。旋回培養によって得られた細胞の集塊をNuclepore上に移し、7日間浮遊培養を行った。移植試験として、SCIDマウス背部全層欠損創にsilicone製のchamberを埋め込み、旋回および浮遊培養によって得られた細胞の集塊を移植した。約2ヵ月程の長期の経過を観察した。また成獣の毛包構成細胞を利用した旋回培養もあわせて行った。単離された細胞からin vitroで高次構造である毛包組織の再構築を行うことができた。移植試験を行うことにより分化を促進し、毛包の再構築を行うことができた。共焦点レーザー顕微鏡で基底膜領域にラミニンの発現が観察された。長期の移植観察では、移植部位で発毛がみられ、さらに分化、成長した毛包が確認された。電顕による観察では毛母細胞と毛乳頭細胞間に基底膜構造が見られた。成獣の毛包構成細胞を利用した旋回培養では、胎生期の場合と比較して、凝集能が低下しており、Agregationは不完全であった。さらに細胞の選択、vitroからvivoへの移行の時期等に関する検討が必要であると考えられた。
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