研究課題/領域番号 |
11671787
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
形成外科学
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
高見 佳宏 杏林大学, 医学部, 講師 (30201601)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2000年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1999年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 代用真皮 / 無細胞真皮マトリックス / 血管新生 / 同時植皮 |
研究概要 |
皮膚全層欠損創に真皮成分を構築するために種々の代用真皮が開発されてきたが、臨床的により信頼の高いものとなるためには、移植後のより速やかな血管新生と安定性が求められる。研究者は代用真皮の中で最も生理的な真皮マトリックス構造を有する同種真皮マトリックスを無細胞化し、その血管新生に与える影響について以下の実験を行った。 (1)無細胞真皮マトリックスの作成:ヒト同種皮膚をデイスパーゼとトリトンX100で処理して細胞成分を完全に除去した無細胞真皮マトリックス(Acellular Dermal Matrix:ADM)を作成した。作成したADMは完全に無細胞であったが、基底膜部分にIV型コラーゲンなどの基底膜構成成分が残存していた。 (2)無細胞真皮マトリックスの基本的な移植特性:細菌学的試験および細胞毒性試験にてADMの安全性を確認した後、ADMをラット背部皮下に作成した開放創に移植した。その結果ADMは免疫学的に拒絶されることなく速やかに生着することを確認した。皮下閉鎖創に移植したADMの血管新生は乏しいいものの長期間にわたって創部に残存する事が認められた。 (3)種々の被覆方法による無細胞真皮マトリックスの血管新生の差異:ADMをラットの背部に作成した3個所の全層皮膚欠損創に移植し、その上を分層植皮、培養表皮シート、シリコンシートで被覆した。移植後5日目に生検しADMの血管新生を組織学的に検討した。その結果、表皮シートでカバーしたADMにおいてご最も豊富な血管新生が認められた。また培養表皮シートからIL8などの血管新生促進因子が分泌されることが示された。 (4)無細胞真皮マトリックスの修飾:4-1 ADMのコラーゲンをグルタールアルデヒドで架橋した場合、血管新生には有意な影響を与えなかったが、長期的な安定性は向上する可能性が示された。4-2 ADMを移植に先立ちレシピエントの血清に浸漬したところ、血管新生には有意な影響を与えなかった。4-3ADM上で線維芽細胞を培養した。ADMへの線維芽細胞の接着のためには高濃度の細胞播種を要した。ADMの代りにコラーゲンスホンジに線維芽細胞を組み込んだ代用真皮において血管新生の促進は得られなかった。 (5)ADMの臨床応用:以上の結果からADMの血管新生は主にその被覆方法に影饗される事が示され、現時点でのADM最も効果的な利用方法は、自家植皮との同時移植であると考えられた。この事から、ADMの臨床応用を試みた。杏林大学倫理委員会のガイドラインに従って、4例の重症熱傷例の創部の一部ADMを移植し同時に自家分層植皮でカバーした。移植ADMは全て良好に生着し、真皮の鋳型として機能することが示された。 結論:移植されたADMの血管新生は、生きた表皮成分で被覆される時に最も促進された。ADMと自家植皮の同時移植はこうしたADMの移植特性に合致した方法であり、臨床的にも信頼性の高い方法であると考えられた。本研究は今後ADMの臨床的有用性の検討を進める上での基盤となるものであると同時に、ADMを基質とした複合培養皮膚の開発に向けた基礎研究ともなるものと考えられた。
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