研究概要 |
BMP-2およびBMP-4(以後,BMPと記す)は,TGFβファミリーに属する蛋白因子で,初期胚における腹側中胚葉誘導,骨芽細胞・軟骨芽細胞分化誘導,肢芽および歯胚における形態形成などにおいて重要な役割りを果たしている。特に肢芽の指間領域においてBMPは,細胞増殖抑制とアポトーシスを誘導することによって肢芽形態形成の中心的役割を果たす。また,歯胚のエナメル結節においても,BMPによる増殖抑制とアポトーシス誘導が歯胚の形態形成のために重要であることが示唆されている。しかし,BMPによる増殖抑制とアポトーシスの解析のために有用な培養細胞モデルは確立されておらず,その細胞内分子シグナルについてもまだ充分に解明されていない。 我々は、本研究によって以下のことを明らかにした。1)BMPは,p21^<CIP1/WAF1>の発現をmRNAレベルで増加させるが,G1サイクリン(サイクリンE,サイクリンD),サイクリン依存性キナーゼ(CDK2,CDK4)あるいは他のCDK阻害因子(p27^<KIP1>,p16^<INK4a>,p15^<INK4b>)の発現は変化させない;2)BMP-2によるp21^<CIP1/WAF1>発現誘導は,CDK4に結合したp21^<CIP1/WAF1>レベルを増加させ,これに伴いCDK4による網膜芽細胞腫蛋白質(Rb)のリン酸化を抑制する;3)BMP-2は,Rbを高リン酸化型から低リン酸化型に変え,これによって細胞周期G1期停止を誘導し、HPV-16E6/E7遺伝子は、このG1期停止をブロックするがアポトーシスは抑制しない;4)抑制型Smad(Smad6,Smad7)の発現は,BMP-2によるSmad1/5C末端のSSXSモチーフのセリン残基リン酸化を阻害し,同時にp21^<CIP1/WAF1>mRNAの増加も抑制する;5)BMP-2によるp21^<CIP1/WAF1>の発現誘導は、Smad1の活性化によってSmad1/Smad4がp21^<CIP1/WAF1>プロモーター内の特定の領域に結合することによって転写が活性化されるためである。 現在は、p21^<CIP1/WAF1>の発現誘導系を樹立し、これとアポトーシスとの関連について解析を行っている。
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