研究概要 |
遺伝性象牙質形成不全症(dentinogenesis imperfecta:DGI)type IIの原因遺伝子はヒト4q21-4q23染色体領域にマップされており(Crosby et al.,1995)、その近傍にdentin matrix protein 1(DMP1)、dentin sialophosphoprotein(DSPP)やameloblastin(AMB)の遺伝子座位が存在し、DGI typeIIの原因遺伝子としての可能性が示唆されている(MacDougall et al.,1997)。我々はこれらの基質蛋白質とDGI type IIを含めた石灰化不全疾患との関係を明らかにするために様々な実験を行ってきた。 我々は、正常ヒトのAMBの遺伝子クローニングし、ヒトAMB遺伝子の全翻訳領域の配列解析と遺伝構造を決定し、サザンブロット解析により、ハプロタイプに1コピー存在する事を報告した。(Toyosawa et al.,2000b;GenBank accession No.AF219994)。現在、正常ヒトゲノムから、翻訳領域の遺伝子多型解析を終了し、DGI type II患者の血液を採取するため、倫理委員会の返答を待っている。 また、ラットの歯のcDNAライブラリーから見つかったDMP1遺伝子の相同遺伝子が歯の欠失した鳥類に見つかった事から(Toyosawa et al.,2000a)、DMP1遺伝子は骨に重要な役割を果たしている事が推測された。そこで、ニワトリとラットの骨においてDMP1 g遺伝子のin situ hybridizationを行ったところ、骨芽細胞には発現しないが、骨細胞に特異的に発現する事を発見した。さらに、この事を立証するため、DMP1に対する抗ペプチド抗体を作製し、DMP1蛋白の局在を検討した。その結果、DMP1蛋白は骨細胞周囲の骨基質に特異的に存在する事が判明し、DMP1遺伝子発現細胞と一致し、世界ではじめて骨細胞に特異的に発現する遺伝子を同定した(Toyosawa et al.,2001)。今後、DMP1蛋白の機能を遺伝子導入実験により解析し、石灰化不全症との関連を検討していく予定である。
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