研究概要 |
骨膜が存在しない歯槽骨-歯根膜界面における骨代謝・骨改造現象,とくにコラーゲン消化吸収機序ならびにその界面における骨芽細胞の役割については十分には解明されていない.そこで骨改造現象の活発なラット(1-6カ月)の歯槽骨-歯根膜境界部組織の変化を組織細胞学・組織細胞化学的に検討した.歯槽骨表面に位置している骨芽細胞に、細胞内コラーゲン小体が観察された.これらのコラーゲン小体には酸性ホスファターゼ活性が認められ、コラーゲン貪食水解小体であることが明らかになった.さらにコラーゲン貪食水解小体にカテプシンBの局在が免疫組織化学的に示され、細胞内ライソゾーム系によるコラーゲン消化吸収機構の一つが解明された,また、骨芽細胞は細胞突起を骨表面のコラーゲン細線維に延ばし、細胞内に取り込む過程が観察された. さらに,骨芽細胞が形成した歯槽骨基質に埋め込まれ,出現した骨細胞が骨改造現象に関与していることを明らかにした.歯槽骨表層で,特に破骨細胞の近傍に位置している骨細胞には,酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性が出現し,破骨細胞細胞とともに石灰化した骨組織の吸収作用に関与していることが認められた.しかし,形成されたばかりの歯槽骨の骨細胞には酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性は認められなかった. これらの結果より、歯槽骨-歯根膜界面における骨芽細胞は骨基質等の分泌とともに、コラーゲン貪食能を持つこと、さらに貪食したコラーゲンを細胞内ライソゾーム系でカテプシンB等のシステインプロテアーゼで分解するコラーゲン消化吸収機能を有している.さらに、歯槽骨表層の骨細胞は必要に応じ酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性を発現し,破骨細胞とともに骨代謝・骨改造現象において重要な機能を果たしていることを明らかにした.
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