研究概要 |
成人性歯周炎の最重要原因細菌とされているP.gingivalisの歯周局所への定着機構の1つとして既に歯肉溝に定着している細菌叢(歯肉溝内先行定着細菌叢から成るバイオフィルム)への結合(共凝集)に注目した。歯肉溝先行細菌の1つとされるP.intermediaとP.gingivalisが共凝集することが観察されたことより、この共凝集に関与するP.gingivalisの因子およびその機構について検討した。この共凝集は種々の阻害剤による実験、加熱処理、proteinase K処理、vesicleより精製した関与因子に対する抗体を用いた遺伝子クローニング等よりP.gingivalisのアルギニン特異的プロテアーゼ(RGP)のrgpA遺伝子のアドヘジン領域のHGP-44,HGP-15,HGP-17,HGP-27の関与が示唆された。これらのタンパク質をGSTとの融合タンパク質として発現し、P.intermediaを加え検討した。これらの融合タンパク質は溶液状態ではp.intermediaを凝集できなかったが、各融合タンパク質結合ビーズに対してP.intermediaが結合することがわかった。また、他のHGPタンパク質と共通アミノ酸配列を1つずつもつ2種のHGP-44の断片をGSTとの融合タンパク質として発現した。この両融合タンパク質を結合したビーズにP.intermediaが結合した。また、HGP-44に対するモノクローナル抗体によるvesicleのP.intermediaの凝集の阻害効果より、rgpA遺伝子産物以外の他の因子の存在も推測されたが、rgpA,kgp,fimA等の変異株の共凝集の実験よりrgpA以外の産物の関与がないものと思われた。 以上のことより、P.gingivalisのrgpA遺伝子産物のHGP-44,HGP-15,HGP-17,HGP-27は菌体表層で複合体を形成し、その中の複数の部位がP.intermediaとの共凝集に関与し、このことが歯肉溝内先行定着細菌叢に参入する機構の1つであると思われた。
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