研究概要 |
成人性歯周炎患者12例中5例、健常者30例中10例の歯周縁下プラークからβ溶血を示す菌株を検出した。レンサ球菌同定用のStreptogramで15菌株中13菌株は7桁コード0110434を示し、S.anginosus NCTC10713のコードに近似していた。また、この13菌株中12菌株がラテックス凝集反応でG群抗血清と反応した。これら分離菌株はS.anginosusと考えられ、本菌はヒト口腔に広く分布することが示唆された。BHI,Todd Hewitt brothよりもGAM brothで溶血活性が強く発現し、培養上清に認められ、本溶血毒は菌体外産生性であった。溶血毒の精製は、H-2菌株の遠心上清から60%硫安飽和画分を得て、これをQ-Sepharose,Sepharose S-300によるゲル濾過し、次いでHydroxyapatiteカラムクロマトグラフィーによって行った。この精製溶血毒をSDS-PAGEで純度を調べると50〜60KDaの範囲にDiffuseな蛋白質バンドを示した。精製成績は回収率33.6%で625倍に精製できた。溶血毒の等電点はIsoelectric focusingによって調べたところpI4.2であった。また、本溶血毒はTrypsin,Chymotrypsin,Proteinase Kなどの処理および70℃、10分処理で失活した。本溶血毒の作用至適pHは7.5で2-Mercaptoethanol(ME),Dithiothreitolなどの還元剤によって2〜3倍上昇した。S.anginosus溶血毒は、ヒト、ウマ、ウシ、ヒツジ、ウサギおよびモルモットの血球に対して同程度に溶血した。また、S.anginosus NCTC10713の菌株から精製した溶血毒の諸性状もH-2菌株のそれと極めて近似していた。 精製した両溶血毒の各10Uを供試してBALB/Cマウスの腹腔マクロファージからのサイトカイン誘導能をELISA法で測定したところ、TNF-αおよびIL-6をといずれの溶血毒も誘導した。また両溶血毒はアポトーシス活性を示した。
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