研究概要 |
1.本研究では,ラットにおける歯肉や頬粘膜などにおよぼす発癌性ヘテロサイクリックアミンの一つであるTrp-P-2の影響を組織学的,AgNOR鍍銀染色,PCNA免疫染色などの方法によって検索した。A群(対照群,無処置群)では,歯肉,頬粘膜に組織学的ならびにAgNOR数,PCNA陽性率などに特に変化は認められなかった。B群(DMSO群)では,A群と比較して,歯肉,頬粘膜に組織学的ならびにAgNOR数,PCNA陽性率などに相違はみられなかった。C群(Trp-P-2群)では,A群と違って,歯肉,頬粘膜に組織学的に上皮性異形成が認められた。また,上皮性異形成の変化は歯肉と頬粘膜ではほぼ類似していた。また,A群と比べて,歯肉と頬粘膜ではAgNOR数とPCNA陽性率は有意(P<0.01)に増加していた。以上,本研究の結果から,Trp-P-2は動物の歯肉,頬粘膜に,前癌病変と考えられている上皮性異形成の変化を引き起こすことが推測された。 2.本研究では、器官培養を行ったマウスの歯胚におよぼす細胞増殖因子EGF及びIGF-1の影響を組織学的ならびに免疫組織化学的(BrdU法)に検索した。本研究の結果,A群(BGJb:6日間)と比較して,B群(EGF100ng/ml)とC群(EGF200ng/ml)では歯胚の上皮細胞の増殖が認められた。しかしながら,A群と比較してD群(IGF-1 50ng/ml),E群(IGF-1 100ng/ml)では,ほぼ同様の結果が得られた。また,A群と比較してF群(EGF100ng/ml+IGF-1 50ng/ml),G群(EGF100ng/ml+IGF-1 100ng/ml),H群(EGF200ng/ml+IGF-1 50ng/ml),I群(EGF200ng/ml+IGF100ng/ml)では歯胚の上皮細胞の増殖が認められたが,B群,C群と比較するとほぼ同様の結果が得られた。本研究の結果から,細胞増殖因子のEGFは器官培養を行ったマウスの歯胚の上皮細胞の増殖を促進することが推測された。一方,細胞増殖因子IGF-1は歯胚の上皮細胞の増殖にあまり影響をおよぼさないことが推測された。
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