研究概要 |
神経の損傷や帯状疱疹後神経痛あるいは持続した疼痛刺激後には軽い触覚や冷覚など非侵害刺激により痛みが引き起こされる(アロディニア)ことが知られている.しかしアロディニアの成因および有効な治療法は知られていない.本研究においてはマウス脊髄腔内に薬物を投与することにより実験的にアロディニアモデルを作成し,その発症について検討して以下の結果を得た. 1プロスタグランジン(PG)E_2によるアロディニアはNMDA受容体拮抗作用のあるketamine或いはATP受容体P2X特異的拮抗薬であるpyridoxalphosphate-6-azophenyl-2'-4'-disulphonate(PPADS)により抑制された. 2P2X受容体作用薬であるα,β-methyleneATPはアロディニアを引き起こし,PPADSにより拮抗された.グルタミン酸によるアロディニアはPPADSにより抑制されなかった. 3α,β-methyleneATPによるアロディニアはN-metyi-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬MK801および一酸化窒素(NO)合成阻害薬N〓-nitro-L-arginie methl ester(L-NAME)により抑制された. 4Suraminは持続性のアロディニアと痛覚過敏を引き起こし,これらはMK801およびL-NAMEにより抑制された. 5Nociceptin 1pg〜500pgはアロディニアを引き起こした. 6Nociceptinによるアロディニアはmorphine 10ng,100ngにより抑制された.Morphine 10ngによる抑制はnaloxon 1μgにより拮抗され. 7NociceptinによるアロディニアはPPADSにより拮抗されなかった. 8歯髄炎後の顔面への非侵害刺激による逃避反応は観察されなかった.本件については更に検討中である. 以上,薬物誘発アロディニアモデルを作成し,脊髄においてATP/P2X受容体がNMDA/NO系を介してアロデイニアを誘発することを見出し,PGによるアロディニアを仲介するなどそのアロディニア発現機序における重要性を明らかにした.一方,nociceptinはこれとは異なった機序でアロディニアを発現することが示唆された.
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