研究概要 |
末梢神経損傷時の痛覚発現に後索路-内側網体路(DC-Thalamic tract,DCTT)を経由する感覚情報が,感覚発現に最も重要な中継核である視床核ニューロンの反応性の変化にどのように関与しているかを調べるため坐骨神経を慢性的に損傷(CCI)した痛覚過敏モデルラットを使い研究を行った。DCTT破壊実験では,以下のような結果を得た。 1.CCIを施し痛覚過敏が惹起された動物の視床後内側腹側核(VPL)ニューロンは,Naive群のVPLニューロンと比べ,機械刺激に対しての反応や自発発火が有意に多かった。 2.DCTTを機械的に破壊することによりVPLの侵害受容ニューロンの機械的侵害刺激に対する反応性が強く抑制された。 以上のことから,CCIを施した動物の痛覚過敏の発現にDCTTを経由する入力が関与していることが示唆された(Pain,2000)。 後索核(DCN)に脳表面からグルタミン酸受容体のantagonist(MK-801とCNQX)を投与することにより,痛覚過敏発現時のVPLニューロンの反応性の変化にDCNニューロンのグルタミン酸受容体が関与するかどうかを調べる研究を計画した。まずVPLニューロンをDCTT,STTを経由する感覚入力を受けているかどうかで分類し,DCTTを経由する感覚入力を受けているものについて,薬物投与を行い次のような結果を得た。 1.CCIを施すと正常ではほとんど記録されなかったDCTTのみから感覚入力を受けるVPL侵害受容ニューロンが記録された。 2.DCNに投与したCNQXに対し容量依存性に機械刺激に対する反応性が低下し,MK801に対しては容量依存性に自発発火の抑制が認められた。 これらのことから,痛覚過敏発現には,DCNを経由する視床への感覚入力の変化が関与していることが示唆された。
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