研究概要 |
免疫応答の著しい特徴は、それが多様な機能と特異性を持った細胞集団の相互作用によって成り立っている点にある。このような免疫担当細胞の多様性は、無数ともいえる外来抗原の刺激に対して個体が正確に対応するために必須のものであるが、研究する上では、このような多様性は均一な研究材料を大量に得られない困難さとなっている。そこで、本研究は、ラットを抗原[(分子量40,000のPorphyromonas gingivalis外膜蛋白質(r40-kDa OMP)]にて免役した後、取り出した局所リンパ節からanti-CD4^+抗体カラムを用いたpunning法にて採取したCD4^+-T細胞クローンを抗原刺激を繰り返すことによって、正常リンパ球を半永久的に増殖させることに成功した。この抗原特異的T細胞を下記のように同定した。 Th1型あるいはTh2型サイトカインmRNA発現の測定 Th1型(IFN-γ、IL-12)およびTh2型(IL-4,IL-5,IL-6,IL-10)特異的mRNAの発現をRT-PCR法を用いて測定し、クローンを同定した。分離したTh2クローンはIL-4 mRNAの発現を示した。 細胞内サイトカインの産生量の測定 細胞株培養上清を用いて、Th1型(IFN-γ,Il-12)あるいはTh2型サイトカイン(IL-4,IL-5,IL-6,IL-10)の産生量を特異抗体を用いたELISA法にて測定し、分離したクローンはIL-4活性を示した。 Th2型クローンのin vitro proliferation assay r40-kDa OMPおよびP.gingivalis菌体に対するTh2型クローンのin vitro proliferationをトリチウムチミジンの取り込みおよび細胞増殖試薬WST-1によるcell proliferation assayを用いて測定した。 B細胞からのin vitro抗体産生へのTh2クローンによる介助 r40-kDa OMPにて免疫したラットの脾臓からB細胞を採取し、クローンT細胞を加えた場合と、加えない場合のB細胞からの抗体産生量を測定し、Th2クローンによるB細胞からのin vitro抗体産生への介助機能を同定した。 Th2型細胞はIL-4およびIL-6を産生することによって、B細胞を活性化し、抗体産生を促す。産生された抗体は局所における細菌の中和とオプソニン化を亢進し、歯周病発症を阻止する方向に働くことを期待する。
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