研究概要 |
骨粗鬆症時の顎骨変化に対して検討した報告は少ないことから,実験的骨粗鬆症ラットを用いて,顎骨と大腿骨との相違,および新しい薬物療法の可能性を検討した。高齢雌ラット(40匹)の卵巣を摘出し,低カルシウム飼料(カルシウム0.1%含有)を給餌することにより実験的骨粗鬆症ラットモデルを形成した。20匹はsham operated control,20匹はintact control,20匹は有機ゲルマニウム(Ge-132)投与群とした。骨粗鬆症の形成は実験開始後3ヵ月で認められ,特に大腿骨で顕著に見られた。下顎骨を摘出し,pQCTを用いて大腿骨と下顎骨の相似点を検討したところ,下顎骨においては,臼歯直下の歯槽骨において大腿骨の骨吸収と同様な所見が得られた。すなわち,骨粗鬆症ラットの下顎骨において,臼歯直下の海綿骨の吸収が著しく,それに反して皮質骨での変化はほとんど見られなかった。Ge-132投与群では,第1大臼歯下の海綿骨の骨密度が有意に高く,また,第1大臼歯近心部での顎骨骨密度が有意に高かった。このことは,骨のリモデリングにおいて,骨粗鬆症ラットでは大腿骨と同様に皮質骨で負の代謝回転は少なく,臼歯直下の海綿骨で大きな負の代謝回転がなされていることをも意味する。骨粗鬆症患者において,歯槽骨の脆弱化および咬合力の低下が示唆される。このような骨粗鬆症ラットにGe-132を投与することにより,骨粗鬆症の進展が抑制されることが示唆された。
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