研究概要 |
若年齢者(24歳以下)と高年齢者(55歳以上)の歯槽骨片から外生した骨芽細胞様細胞を2〜3代継代培養して用いた。細胞をCa^<2+>で刺激する際の培養液は,10%FBSを含むα-MEMに終末濃度で1.8,2.5,5および10mMになるようにCaCl_2を添加して調製した。細胞外matrix成分(I型コラーゲン(COL-I),骨シアロタンパク質(BSP),オステオカルシン(OC),オステオネクチン(ON)),MMPs,TIMPs,破骨細胞分化因子(ODF)および破骨細胞形成抑制因子(OCIF)の遺伝子発現は,定量的RT-PCR法によって調べ,,以下の結果を得た。 1.対数的な細胞増殖は,低Ca^<2+>濃度(1.8および2.5mM)では認められたが,高Ca^<2+>濃度(5および10mM)では認められなかった。 2.COL-1とON発現は,若・高年齢者ともにCa^<2+>の影響はほとんど認められなかったが,BSPとOC発現は,高Ca^<2+>濃度で増加した。これらの結果から,骨remodelingの骨吸収に伴う局所的なCa^<2+>濃度の上昇は,骨基質の石灰化の際に重要な役割を果たすBSPやOC産生を促進させることが明らかになった。 3.MMP-1とMMP-2発現は,若・高年齢者ともにCa^<2+>の影響がほとんど認められず,MMP-13発現は,Ca^<2+>添加の有無に関わらず検出されなかった。これらの結果から,局所的なCa^<2+>濃度の上昇は,コラーゲンを中心とする細胞外matrix成分の分解を担うMMPs産生には,ほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。 4.TIMP-1とTIMP-2発現は,若・高年齢者ともにCa^<2+>濃度依存的に増加する傾向が見られ,若年齢者で顕著に認められた。これらの結果から,局所的なCa^<2+>濃度の上昇は,TIMPs産生を促すことによって,骨の細胞外matrix成分の分解を抑制させることが考えられ,この作用は,加齢に伴って低下することが示唆された。 5.OCIF発現は,若・高年齢者ともに高Ca^<2+>濃度で強く認められ,若年齢者で顕著であった。一方,ODF発現は検出されなかった。これらの結果から,局所的なCa^<2+>濃度の上昇は,OCIF産生促進を介して破骨細胞形成を抑制していると考えられ,その作用は,加齢に伴って低下することが示唆された。
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