研究概要 |
部分的に歯の喪失した症例について,義歯の装着が咀嚼能力を回復する効果を明らかにする目的で,唾液分泌量,咀嚼回数,ゼリーを用いた食品咬断率,質問票を用いた食品スコアを総合的に評価する研究を行った. 研究成果:1.平成11年度から平成12年度にかけて義歯を製作した症例について,義歯装着と義歯非装着の条件で安静時唾液とパラフィンワックス咀嚼時の刺激唾液分泌速度を測定した.パラフィンワックスの咀嚼回数や,デンタルプレスケールによる最大咬合力も同様の条件で測定した.義歯の装着によって,安静時唾液分泌速度には有意な差が認められなかったものの,刺激唾液分泌速度と最大咬合力は有意に上昇し(p<0.001),咀嚼ストロークが減少した(p<0.005).2.高齢義歯装着者に応用しやすく,食品咬断能力を評価できるようなゼリーの開発を目指して,成分比の異なる2種類のゼリーを産学連携によって製作した.これらのゼリーにおけるテクスチュロメータの破断応力には有意差があり(p<0.001),原型から64分割したゼリーの表面積と,ゼリーの分割片から溶出するグルコース濃度との間には強い相関が認められた(R=0.98,p<0.0001)ので,ゼリーが食品咬断率の測定に適していることが分かった.3.診療室に隣接した検査環境を整備したことから,唾液分泌機能と咀嚼能力を短時間で評価することが可能となった. 今後の予定:義歯が唾液分泌機能や咀嚼能力に及ぼす効果をより多くの症例で検証することと,これらの研究成果を踏まえて,高齢者の摂食・嚥下を賦活化する研究計画を進めたい.歯科補綴学,加齢歯科学,口腔生理学,食品化学など多くの研究機関で産学協同研究プロジェクトとして総合的に発展することが望まれる.
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