研究概要 |
【緒言】我々は厚さ約15mm程度の口蓋床を夜間ブラキシズムに対する治療に使用しており,その臨床的な治療効果を認めているとともに,筋電図学的な研究においてこのパラタルアプライアンスが睡眠中の咬筋筋活動を減少させることを認めている。本研究は,種々の形態の口蓋床をMPD症候群患者に対して使用し,その臨床的効果を判定することを目的とした。 【実験用アプライアンス】 1)馬蹄形を呈する口蓋床(1)(厚さ1mm),2)口蓋全体を覆う口蓋床(2)(厚さ1mm:前方および側方は歯列に接し,後方はAh-lineまでとする),3)口蓋全体を覆う口蓋床(3)(口蓋最深部から歯頚部までをレジン塊で満たしたもの:後方はAh-lineまでとする),4)口蓋全体を覆い,口蓋正中部において上記の口蓋床(1)の1/2の厚さをもつ口蓋床(4) 【実験1】被験者は顎関節,咀嚼筋および頭頸筋群などに疼痛の自覚がなく,習慣的に夜間ブラキシズムを行っている有歯顎者,男性1名,女性3名,計4名(平均年齢 36歳)を対象とした.被験者に対して,上記の4種類の形態の異なる実験用口蓋床を装着した.被験者には,自宅において各口蓋床につき7日間装着させ筋電図の採得を行った。 【実験2】岡山大学歯学部附属病院第二補綴科を受診した顎関節症患者のうち,連続的に30名のMPD症候群患者を選択し,ランダムに上記の4種類に口蓋型アプライアンスを選択して装着させ,その臨床効果を判定した。 【研究成果の概要】 実験1の結果,口蓋床(3)は著明な夜間咬筋筋活動の抑制効果を示すことが明らかになった。一方,口蓋床(4)については,夜間咬筋筋活動の抑制効果は認められなかった。 実験2の結果,4種類のいずれのアプライアンスの使用によっても,筋症状は減少する傾向を示した。これらのアプライアンスによる症状の改善は,得に摂食時の顎周囲の疼痛および不快感に関して著明に認められる傾向があることが明らかになった。
|