研究概要 |
口腔リハビリの概念は口腔清掃と口腔機能回復への関わりを含む「口腔ケア」であり,これは単に義歯などの補綴物を入れる行為や、口腔清掃という行為にとどまらず,全身状態の管理を含めた口腔機能の評価と機能回復に対する継続的な関わりが基本となる.実践するのは現場の医師,介護者や介護支援の人々であり,これら関係職種への啓蒙教育,共同理解が口腔ケア対策の要となる. 要介護高齢者にとって不顕性誤嚥による難治性肺炎は致命的であり,その原因の一つは口腔内常在菌の肺への流入といわれている.すなわち要介護者においては口腔カンジダ症を含めた消化管カンジダは全身状態を左右する因子となると考えられ,口腔ケアとともに口腔カンジダ症の予防や適切な治療法の確立が今後大きな課題である.本研究では義歯性口内炎を有する入院高齢者に対して,抗真菌剤である2%ミコナゾールゲル剤(フロリードゲル)を口腔内塗布し,その使用量,投与回数,臨床効果を検討した.調査対象は,福岡県粕屋郡にある老人病院の併設歯科を受診した入院患者で,臨床的に口腔真菌症が疑われ,かつ培養検査により真菌を確認した口腔真菌症23症例である.ミコナゾールゲルを規定の投与量10g/日を2週間投与(投与1法)は一時的に効果的であるが,大半は中止後3〜4週間で真菌数は治療前と変わらない菌数になり,投与方法の再検討が必要と思われる.またミコナゾールゲル2.5g/日投与(投与2法)においては,コロニー数が10^4以下の場合は3週間程度で十分な効果が認められれ,投与中止後もその効果が最低1ヶ月はあることが示された.しかしコロニー数10^5以上では効果が少ないことから同投与方法では不十分であり,このような患者においては投与1法で治療後,投与2法に切り替え,口腔ケアーとして定期的な薬剤投与もカンジダ症既往患者においては考慮する必要があると思われる.加えて薬剤の長期使用による副作用についても今後検討する必要がある.
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