研究概要 |
各種義歯用レジンやコンポジットレジン,セラミックス,純チタンを作製し,酸化チタンの薄膜コーティングが可能か検討した.その結果,スプレーコーティングによって,いずれの材料でも厚さ約0.7μmの酸化チタン薄膜を形成することができた.コーティング膜の表面分析を行ったが,いずれの基板で形成された薄膜も酸化チタンであり,結晶構造はアナターゼであることが判明し,薄膜の光触媒作用が期待できた. しかしながら,コーティング膜の基板との接着強さは,加熱温度が低かったレジンでは,約10MPaと低い値を示し,チタンやセラミックスでは80MPa以上の接着強さを示し,その有用性が示唆された.コーティングしたチタンでは耐摩耗性が向上したが,レジンではその密着強度が小さかったことから,簡単に剥離し耐摩耗性の向上が全く認められなかった. 一方,Streptococcus mutansに対する抗菌性を,鋳造純チタン試験片撤去後,直下の培地の色調変化よって評価した.紫外線照射時間が3時間までは培地が黄変し,6時間では若干黄色を呈していたが,12時間と24時間では赤色のままであった.また,酸化チタンのコーティング処理は施してあるが紫外線照射を行わなかったコントロールの培地は黄変した.したがって,紫外線照射を行った光触媒活性をもつ酸化チタン薄膜は,S.mutansに対して抗菌活性を示すことがわかった. 以上のことから,酸化チタンの薄膜コーティングは耐摩耗性の改善の上でも,チタンにはきわめて有効であり,6時間以上の紫外線照射を行うと,短期的にはS.mutansに対して抗菌効果を示すことが明らかになった.
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