研究概要 |
研究では主としてチタンキャストクラスプの生体適合性を鋳造後の表面性状から検討するとともに,一方ではヒートショック法を利用した短時間鋳造法の適用を試み,口腔機能の早期回復が可能となるのかどうかについて検討を加えた。チタンのキャストクラスプは,他のクラスプ用金属に比べて表面あれが目立ち,義歯着脱時に鉤歯に大きな負担が掛かることが懸念された。しかし,チタンキャストクラスプは専用埋没材の成分によって大きく影響を受け,非リン酸塩系でシリカを含有しない埋没材で鋳造を行うと,他のクラスプ用金属と遜色ない表面が得られることが分かった。したがって,チタンキャストクラスプは製作法によって大きく性質が異なり,生体への為害作用が起こる可能性があることが示唆された。 一方,短時間鋳造法ではチタンの市販鋳造システムを取り上げて検討した。セレキャストシステムでは複模型材(セレベストDM),外埋没材(セレベストD)ともに熱処理を要するため,作業時間がCo-Cr合金での製作に比べて著しく長くなることが知られている。そこで,これらの処理にヒートショック法を適用したところ,Dは適応可能であったがDMは電気炉に投入後,僅か数分のうちに鋳型が爆発してしまった。この原因を探るために機械的強さを測定したが,強さはむしろDMの方が大きく,爆発との間に相関は見出せなかった。また,爆発時の鋳型の温度変化を調べたところ,約100-120℃付近で鋳型は爆発することをつきとめ,急激な熱負荷により鋳型が急乾燥が起こり,そこで生じる内部からのガスによる爆発であると推察した。鋳型をヒートショックする前に約100-150℃の電気炉内で10-20分間放置して鋳型の乾燥を行ってからヒートショック法に供すると爆発を起こさずに短時間で鋳型が焼却できることが判明した。以上のことから,チタンの短時間鋳造は可能であろうと考えられたが,まだ鋳造体の精度や確率など未知の部分もあり,今後ヒートショック法がチタン鋳造に対して定着していくためには検討を重なる必要があると思われた。
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