研究概要 |
9種類の歯冠用コンポジットレジンの特性を調査するため,コンポジットレジンの校正要素で特性に大きな影響を及ぼすフィラーの影響について,フィラー形態の観察,フィラー組成の測定を行った,また硬化特性を調査するため,各種照射器による硬化深度,マトリックスレジン組成,重合率変化の計測を行った.さらに,歯冠用コンポジットレジンの破壊靭性試験,直接引張試験,曲げ試験,硬さ試験を行い,それぞれの応力特性値の測定から,機械的性質の評価を行った. 歯冠用コンポジットは,各コンポジットレジンでフィラー特性,硬化特性,機械的性質などの特性が大きく異なることが認められた.前臼歯修復用のコンポジットレジンと比較すると,フィラー含有量が低く,フィラー形態は微細であり,硬化特性はデンチン色のコンポジットレジンにおいて顕著に低いことが認められた.また,歯冠用コンポジットレジンの中においても,前歯部前装用と臼歯部領域にも適用可能なコンポジットレジンの2つのタイプ種類があり,フィラー構成,フィラー組成が大きく異なっていた.各種機械的性質の測定から,各歯冠用コンポジットレジンの有する機械的強さは大きく異なっていたが,いずれの歯冠用コンポジットレジンにおいても前臼歯修復用のコンポジットレジンよりもこれらの特性は低いことが認められた. 口腔内磨耗現象をシミュレートした,OHSU式摩耗試験機を用いて測定した歯冠用コンポジットレジンの摩耗特性から,歯冠用コンポジットレジン自体の磨耗は小さいものの,対合エナメル質を大きく磨耗させる材料が認められた.歯冠用コンポジットレジンの磨耗特性は,機械的性質のみならずフィラー特性による影響も大きいことが示された.口腔内における歯科用コンポジットレジンの磨耗特性には,種々の要因が関与するため,磨耗試験条件,対合条件,試験環境等について,今後さらに検討する必要性が認められた.
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