研究概要 |
現在の肝炎の抗体検査は血液を検体としているため,針刺し事故などによる感染の危険性や採血のための技術者の確保が必要であるなど,検体が血液であることが,必ずしも最良の方法とは言い難い.そこで当教室ではB型,C型肝炎の感染が確認されている患者から簡易唾液採取器具オラシュアを用いて唾液を採取し,血清用肝炎抗体キットで唾液による肝炎抗体測定を行った.実験内容は唾液試料に対する基礎的検索事項として,1.同時再現性試験,2.希釈試験,3.凍結融解試験,4.保存安定性試験.の4項目を,また臨床的な検索として,同検体より採取した血液試料との結果を比較した.同時再現性試験,希釈試験,凍結融解試験,保存安定性試験の基礎的検索ではその測定値は精度範囲内であり判定結果に変化は認められなかった.希釈試験では直線性が認められ,定量の可能性が示唆された.検体の保存安定性においてはHCVでの保存状態において2週間目に測定値力が低下したが検体輸送を考えたときにおいて2週間放置されることは考えにくいため問題ないものと考えられる.これにより従来みられた保存の問題も解決された.同時再現性や凍結融解試験においても繰り返しの測定に対し判定値に変化は見られず試料の安定性を証明できる結果となった.また本学歯科病院での検体15例及び有床義歯学講座医局員健常者16例による血清および唾液中のHBc, HCV抗体をそれぞれ測定した,血清結果に対する唾液の測定結果は,B型で血清陽性者7人に対し唾液陽性者6人で,陽性一致率(感度)86%,血清陽性者16人に対し唾液陽性者16人で陰性一致率(特異性)100%であった.同じく,C型では感度88%特異性100%であった.
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