研究概要 |
研究1 長期使用型軟性裏装材の臨床研究は少なく,使用に関する明確な根拠は少ない。そこで,臨床現場における,軟性裏装材使用に関する根拠の一端を検索することを目的として研究を立案した。日本大学松戸歯学部付属歯科病院に来院した歯顎患者から,選択基準を満たした患者をサンプリングし,28名を被験者とした。デザインは2期型クロスオーバー法による無作為割付臨床試験である。通法の義歯治療および,上顎は通法義歯,下顎は軟性裏装義歯の治療を介入として行った。層別化ブロックランダム法を用い,通法義歯から軟性裏装材使用義歯(軟性義歯)へ移行する群と,その逆の2群に割付を行った。検討項目は咀嚼値、調整回数、満足度そして義歯への嗜好の四項目とした。本研究から以下の結果が得られた。 1.調整完了から2,3か月目では,軟性裏装義歯の咀嚼値は通法義歯より高かった。2.軟性裏装義歯の調整回数は通法義歯の調整回数より少なかった。3.通法義歯と軟性裏装義歯間の満足度に差は認められなかった。4.72%(18/25)の被験者が軟性裏装義歯を選択した。 研究2 研究1の結果を受け、軟性裏装材の使用が総義歯装着者の咀嚼機能に及ぼす影響について検討する目的で研究を立案した。研究1と同じデザインを用い、通法義歯と軟性義歯を装着した10名の被験者の咀嚼機能評価を行った。評価項目として咀嚼運動時の咀嚼筋筋電図、最大かみしめ時の咀嚼筋筋電図ならびに下顎切歯点運動の比較を行い以下の結論を得た。 咀嚼筋前期における咬合相時間は通法義歯より軟性義歯が長いことが明らかになったが、それ以外の評価項目には差が認められなかった。 無作為割付臨床試験の結果、長期使用型軟性裏装材の臨床応用は効果的であることが示された。
|