研究概要 |
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)水溶液を酸処理した象牙質にプライマーとして作用させると,象牙質に対するレジンの接着強さは大きく向上することはよく知られている.しかし,その接着機構については未だ不明な点が多い. 本研究では,HEMAを介する象牙質とレジンとの接着機構を明らかにするために,象牙質コラーゲンと同じ官能基を有するコラーゲンモデル化合物(オリゴペプチド,Pro-Hyp-Gly-Pro-Arg-Gly-Pro-Asp-Gly)をHEMA水溶液中に共存させ,HEMAおよびオリゴペプチドに帰属されるカーボン核の縦緩和時間(T^1)を測定し,HEMAとオリゴペプチドとの相互作用の詳細について検討した.その結果,以下の結論を得た. 1.オリゴペプチドを共存させた系でHEMAに帰属されるカーボン核のT^1を測定した結果,HEMAエステルカルボニル基がオリゴペプチドと相互作用を起こし,両者を共存させる水溶液のpHが低くなるほど,HEMAエステルカルボニル基はオリゴペプチドと強く相互作用を起こすことがわかった. 2.HEMAを過剰に共存させた系でオリゴペプチドに帰属されるカーボン核のT^1を測定した結果,HEMAエステルカルボニル基はオリゴペプチドを構成しているアミノ酸残基のAspの側鎖カルボキシル基およびC末端のGlyカルボキシル基と相互作用を起こし,両者を共存させる水溶液のpHが低くなるほど,つまり,Asp側鎖およびC末端Glyのカルポキシル基の解離を抑制するほど,オリゴペプチド分子内カルボキシル基はHEMAエステルカルボニル基と強く相互作用を起こすことがわかった.
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