研究概要 |
近年,口腔癌に対する新たな治療法として遺伝子治療が注目されている。そこで,今回,われわれは,遺伝子導入ベクターとしてアデノウイルスベクター(Ad)とアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いて単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSVtk)とガンシクロビル(GCV)を用いた自殺遺伝子治療の基礎的研究を行った。まず,in vitroにおいて口腔扁平上皮癌由来の細胞株を用いAdおよびAAVの導入効率を検討した。その導入効率は、Adにおいて,MOI:1で10〜30%であり、MOI:10ではほぼ100%であった。また,AAVでは,MOI:1000において20〜40%であり、MOI:10000ではほぼ100%であった。次にHSVtk/GCV自殺遺伝子治療の殺細胞効果を検討した。Adにおいては,MOI:10においてほぼ100%であり、MOI:1においては70〜80%であった。また,AAVでは,MOI:10000においてほぼ100%であり、MOI:1000では70〜80%であった。ヌードマウス背部皮下移植モデルにおいて,AdおよびAAVを用いて導入効率を評価し,ウイルスベクター感染24時間後において針の刺入部位の周囲の腫瘍細胞は濃染色されIn vivoにおいて遺伝子導入が可能であることを確認した。つぎにAdおよびAAVによるHSVtk遺伝子導入とそれに引き続くGCVの投与による自殺遺伝子治療の抗腫瘍効果を評価した。Adにおいてコントロール群と比較して治療群では58.6%の腫瘍宿曜を認め,AAVでは,45.4%の腫瘍縮小を認めた。AAVは,それ自身病原性がないため反復投与が可能ある。AAVHSVtk/GCV2回治療群において1回治療群と比較して著明な抗腫瘍効果を認めた。これらのことより,AdおよびAAVを用いたHSVtk/GCV自殺遺伝子治療は,口腔扁平上皮癌に対して有効であることが示唆された。
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