研究概要 |
家兎を対象とし,下顎骨体部を骨切りし,骨延長器を取り付けた.3日間の安静期間の後1日1ミリずつ骨延長をした.延長量は10ミリである.1ヵ月の固定期間の後屠殺,下顎骨を採取し,形態とエックス線学的検索を行った.また,骨延長が筋機能に及ぼす影響については筋電図を測定した.筋電図は咬筋,顎舌骨筋と側頭筋から針電極法によって骨延長開始前と骨延長終了後に,安静時と咀嚼運動時に記録した. 結果: 1.採取下顎骨の観察;組織学的には骨端部からは成熟した新生骨,線維性骨、未分化間葉系細胞と移行し、幼弱な層板骨による骨梁構造が観察された。 2.咀嚼運動時では開・閉口筋の筋放電はリズミカルで協調性を示し,骨延長に伴う筋の延長や筋付着部の移動による筋の影響を疑わせる所見を認めなかった.さら,安静時の異常放電は観察されなかった.家兎では1センチの下顎骨の延長は筋機能に影響しないことが示唆された. 3.欠損部の瘢痕組織が骨片移動・骨形成に及ぼす影響即時骨延長群は10ミリの骨切除,3日の待機期間の後切除近心縁より1センチの所に骨切り,1日1ミリずつ欠損部に向けて骨片を移動した.待機骨延長群は骨切除4か月後同様に処理した.移動骨片前方端部では,即時移動群では是に接触した顎骨との間に骨組織が介在し,骨架橋を認めた.一方,待機群では瘢痕組織と思われる線維性組織が介在し,骨癒合には至っていなかった.このことから本法による骨再生は腫瘍切除などの一次手術時に施行することで骨癒合を期待できることが示唆された.
|