研究概要 |
単一の細菌は宿主の免疫作用により殺菌されやすいが,異種細菌の共凝集本は生体の免疫応答から回避できるといわれ,組織に先駆けて定着している病原性の低い細菌に,病原性の高い細菌が共凝集体を形成することにより病原性の高い細菌叢を形成することが知られている.それゆえ,細菌の保持する共凝集能は重要な病原因子の1つであると考えられている.従って歯周病の発症・進展に対する予防策として,原因菌の定着を阻止する意味で共凝集を中和することは細菌感染の制御に効果的である.本申請は,P.gingivalis共凝集因子の遺伝子を包含するDNAワクチンを作製し,抗体産生の誘導を試みる.このアプローチは歯科領域のみならず医科領域においても次世代のワクチンとして脚光を浴びており,将来的に歯周病の予防あるいは治療に応用することを目的としている.昨年度の結果をもとに構築したプラスミドを2週間に1度の間隔で3回,マウス大腿四頭筋に筋肉注射した.経時的に眼窩静脈叢より採血を行い,得られた血清のr40-kDa OMPに対する抗体価をELISA法にて測定した.その結果,共凝集因子の遺伝子を包含するプラスミドを接種したマウス群ではコントロールプラスミド接種群に比べ,接種7日目より明らかな抗体価の上昇が認められた.また共凝集因子の遺伝子を包含するプラスミド接種マウス群では接種77日目においても有意に高い抗体価を維持していた.さらに得られたマウス血清は,P.gingivalisのvesiclesとStreptococcus gordoniiの共凝集を阻害した.以上の結果より今回構築したプラスミドが歯周病発症機序の第一段階である菌定着を阻止し,歯周病の予防あるいは治療に有用であると示唆された.このことは,今後の歯周病に対する遺伝子治療の一つであるDNAワクチン療法の実用化への一助になると考えられた.
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