研究概要 |
光線力学療法(photodynamic therapy PDT)が新しいレーザー治療として注目されており,選択的に腫瘍病巣のみが消失することが認められている.しかしPDTによる腫瘍縮小効果については検討されているもののPDTによる癌転移については明らかではない.そこで本研究では口腔癌由来の悪性転移細胞を使用してPDTと癌転移効果について検討した. 照射光として可視光(波長530〜540nm)を使用して,光感受性色素にはフォトフィリンを使用した.4NQO誘発ラット舌扁平上皮癌の非転移株RSC3E2および転移株RSC3LMを,対照としてマウス線維芽細胞株を用いた.PDTの効果については細胞培養液中にフォトフィリンを添加し,光線照射を行い,12時間培養した後に細胞を固定,アポトーシスを蛍光顕微鏡下に検出しアポトーシス指数を算出,評価することにより検討した.その結果,フォトフィリン単独では非転移株RSC3E2および転移株RSC3LMともアポトーシスは殆どみられなかったが,光線照射の併用により,悪性度の高いRSCE2細胞では,正常線維芽細胞と同様にPDTに対して抵抗性を示したことから,癌細胞でも細胞種により顕著な差があることが示された.したがってPDTの条件によっては細胞レベルの検討ではあるものの,癌転移を促進する可能性も示唆された.
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