研究概要 |
PCR法を用いて前思春期性歯周炎患児の歯周病原性菌の同定を目的として検討した。 歯ブラシ法を用いることによって小児に歯科的不安を与えることなくサンプリングすることが可能であった。小児の口腔から回収した歯垢は,全て細菌が有する16S ribosomal DNAを含んでいた。 検出された10菌種,A.actinomycetemcomitans(Aa),P.gingivalis(Pg),P.intermedia(Pi),P.nigrescens(Pn),B.forsythus(Bf),T.denticola(Td),C.rectus(Cr),C.sputigena,C.ochracea(Co)およびC.gingivalis(Cg)の検出率はそれぞれ7.7%,9.6%,6.7%,70.6%,57.1%,14.3%,100%,37.7%,87.7%および86.1%であった。これらを健康群,歯肉炎群および歯周炎群に分けてそれぞれの菌種別検出率を検討したところ,Aa,Pg,Pi,BfおよびTdの検出率は,健康群よりも歯肉炎群および歯周炎群の方が高かった。一方,Pn,CoおよびCgは健康群あるいは疾患群に関わらず高い検出率を示し,また小児の年齢が上がるにしたがって検出率は増加した。さらに,これらの菌種について同一家族内で検討したところ,歯周病原性菌が検出された小児のほとんどは両親にも検出された。 以上のことから,従来報告されているようにAa,Pg,Piは,前思春期性歯周炎の患児から比較的高率に検出された。Pnは歯周病関連菌ではあるが,病原性の観点から必ずしも前思春期性歯周炎に多く検出される菌種ではないことが明らかとなった。また,小児への歯周病原性菌の伝播は両親から起こる可能性が高いことが明らかとなった。
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