研究概要 |
1.乳歯象牙質に対するヌープ硬さ 齲蝕症第2度の乳前歯について,齲蝕下並びに健全乳歯象牙質のヌープ硬さを測定し,統計処理を行った.その結果,健全側では,象牙質表層から深層へと硬さが有意に減少した。齲蝕側の齲窩直下と齲蝕側並びに健全側の歯髄腔付近のヌープ硬さは,他の部位より有意に低かった。また,齲蝕側の齲窩該当部のヌープ硬さは,健全側の同一部位より有意に低い傾向を示した。さらに,齲蝕とは直接関係のない部位についても,齲蝕側のヌープ硬さは健全側より有意に低い傾向を示した。透明層のヌープ硬さは,健全象牙質より低かった。 2.Ca,P,Ca/P及びMgとヌープ硬さ間の相関性 ブラックコンパウンド包埋後にカーボン蒸着を行った試料について,EDXによる点分析を行った結果,定量分析を行ったほとんどの部位について,Ca,P,Ca/P及びMgとヌープ硬さ間には有意な相関はみられなかった。 3.除去法が齲蝕下象牙質のヌープ硬さに与える影響 齲蝕症第2度の乳犬歯を2分割し,同一歯の軟化象牙質をchemo-mechanical齲蝕除去剤のCarisolv^<TM>とラウンドバーで除去後の象牙質のヌープ硬さを窩底から300μmまで測定した結果,両者間に有意差はみられなかった。 4.Nanoindentatorによる乳歯象牙質の超微小硬さと弾性率 齲蝕症第2度並びに齲蝕のない健全な乳犬歯の超微小硬さ(H)と弾性率(Y)をnano-indentation testerで計測した。健全歯については,HとYともに,深層は表層と中層より有意に低かった。齲窩該当部を齲蝕歯と健全歯間で比較すると,HとYともに,齲蝕歯が有意に低く,齲蝕に直接関係のない部位についても齲蝕歯が有意に低い傾向を示した。
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