研究概要 |
一般に自臭症患者は他覚臭がほとんどないにも関わらず自己の口臭に悩み,口臭により生じる対人恐怖的訴えが強い傾向にある。我々は機器等により「口臭なし」と客観的に評価されているにも関わらず自己の口臭を過度に意識している人は自臭症のリスクが高いと考えている。このことから,高校生を対象として口臭に対する認識や行動を調査・分析し,「自臭症予備群」のスクリーニング法を開発することを試みた。1999年度の調査では口腔診査,意識調査,歯肉の自己評価を行った。その結果,歯肉の自己評価が診査者より厳しい生徒には以下の傾向が認められた。PMA値が高い,歯肉からの出血を自覚する頻度,口臭に対する心配の頻度が高い,生活満足度が低い等(p<0.05)。2000年度の調査では揮発性硫化物(VSC)測定機器による口臭の測定,舌苔付着の評価,質問紙調査を実施し,口臭の客観的評価と主観的評価の関連を分析した。その結果,口臭ありと評価された生徒(VSC値≧150ppb)は口臭なしと評価された生徒に比べて冷水痛や甘味刺激痛を感じる頻度が低く(p<0.05),生活満足度が低い傾向(P<0.05)を示したが,口臭の主観的評価に差は認められなかった。また,口臭なしと評価された生徒を口臭に対する心配がある群とない群の2群に分け,口腔関連の自覚症状,日常生活行動の比較を行った結果,口臭に対する心配がある生徒は口渇感の程度が強く(p<0.05),舌苔を認識する頻度や日常生活におけるストレスが多いと感じていた(p<0.05)。 自臭症患者の一般的特徴として口渇感があるが,本研究でも他覚的な口臭がないにも関わらず自己の口臭を自覚している生徒は口渇感の程度が強く,歯肉のの自己評価が厳しく,日常生活におけるストレスが強いという特徴を有していた。このような特徴が「自臭症予備群」のスクリーニング項目として有用であることが示唆された。
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