研究概要 |
外科的矯正治療を適用した患者の咬合の安定性について検討した.奥羽大学歯学部附属病院において,骨格性下顎前突症と診断され外科的矯正治療を受けた患者のうち,本研究の趣旨を理解し協力の得られた9名から資料を採取した.下顎運動については1名(器機の不調によりデータが不正確と判断した)を除く8名のデータを分析した.下顎頭の運動軌跡では,クリックを伴うものや運動制限が認められるものまで様々であったが,日常生活に際して困難となるような症状の発現をみるには至らなかった.下顎の基準位(RP)と咬頭嵌合位(ICP)における下顎頭のズレは,前後方向では許容範囲内であったが,上下方向で1例,また左右方向では3症例で許容範囲を超えていた.咬合平面傾斜角には左右差が認められる症例が半数存在した.また咬合平面版とRMIによる咬合平面傾斜角の差は,最小0.2゜〜最大3.6゜,平均1.7゜であった.矢状顆路角に著しい左右差を認めるものが2例,相対顆路角と相対切歯路角に不調和が見られるものが3例存在した.最大開閉口運動では,ほとんどの症例で咬頭嵌合位から最大開口位において左右への偏位を示していた.ガム咀嚼によるチューイングサイクルでは,8症例中5症例がチョッピングタイプで3症例がグラインディングタイプを示していた.全体的な特徴として,線状パターンのストロークを示すものが多いことやストロークにばらつきが多いことが挙げられる.本研究の結果として,顆路と切歯路の不調和,咬頭嵌合位と基準位との差,左右の矢状顆路傾斜度の差,咀嚼パターンの異常などを認める症例が存在していた.外科的矯正治療においては手術による骨格系,歯系の大幅な改善を行うため,術後の咬合機能についても十分な検討と予後の観察が必要であると思われた.
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