研究概要 |
Porphyromonas gingivalisがヒトの歯周ポケットにおいて線毛を発現しているか否か,あるいは線毛を介した付着-定着機構の実態を免疫組織化学的,免疫電顕的に検索し,以下の成果を得た。免疫組織化学的検索により,被験した6試料のヒトの歯周ポケットにおいて抗線毛抗体陽性のP.gingivalisを検出した。歯周ポケット浅部では,抗線毛抗体に対する陽性反応は,歯根付着性プラークから上皮関連プラーク領域に及ぶ広い領域で検出された。歯周ポケット中央部の陽性反応は,歯根付着性プラーク及び弱付着性プラーク領域で散在性に検出された。歯周ポケット深部の陽性反応は,主に歯根付着性プラーク及び弱付着性プラーク領域でみとめられ,上皮関連プラークではあまりみられなかった。歯周ポケット底部に近づくに従い,陽性反応は,歯面に近接した部位で検出される頻度が増加する傾向を示した。また,陽性反応は,歯周ポケットのいずれの深さにおいても上皮内では検出されなかった。次いで,歯周ポケット底部に位置するプラークフリーゾーンを走査免疫電顕法により検索したところ,被験13試料中8試料においてglycocalyx様の構造物とともに金コロイドで標識されたP.gingivalisが観察された。さらに,同部を透過免疫電顕的に検索したところ,糖染色で特異的に電子密度が高くなった層状の菌体外多糖が観察された。これらより,ヒトの歯周ポケットでP.gingivalisが線毛を発現し棲息していること,さらにポケット底部では線毛を介して歯面に付着した後,菌体外多党を産成しバイオフィルム形成細菌として機能していることが明らかとなり,同菌のヒトの歯周ポケット,特にポケット底部での増殖の実態が詳細に解明された。
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