研究概要 |
本研究期間においては、新しい方法論としてスズ(II)やマグネシウム(II)を活用する高立体選択的HWE反応を検討した。目的としたのは、アリールアルキルケトンを基質とした3置換あるいは4置換アルケンの高立体選択的(E体/Z体)合成法の開発ならびにプロキラルなケトンを基質とする不斉HWE反応の開発である。その結果、スズ(II)トリフラート-N-エチルピペリジン条件下に行なう種々のアリールアルキルケトンのHWE反応は、ビス(トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルを用いた場合はZ選択的に、2-フルオロ-2-ジエチルホスホノ酢酸エチルを用いた場合はE選択的に、いずれも高い立体選択性で進行することが明らかとなった。さらに、各種アリールアルキルケトンを基質とした2-アルキル-2-ビス(トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルのHWE反応においては、スズ(II)トリフラート-N-エチルピペリジン条件下、目的とするα,β-不飽和エステル(4置換アルケン)が高立体選択的に生成した。また、2-フルオロ-2-ジエチルホスホノ酢酸のジアニオンと種々のアルデヒドとのHWE反応においては、良好なZ選択性でα-フルオロ-α,β-不飽和カルボン酸(3置換アルケン)が生成することを見いだした。 次に、不斉配位子としてキラルジアミンを用い、スズ(II)トリフラート-N-エチルピペリジン条件下にアキラルな2-フルオロ-2-ジエチルホスホノ酢酸エステルとプロキラルな2-置換-1,3-ジオキサン-5-オン誘導体との不斉HWE反応を行うと良好なエナンチオ選択性(〜80%ee)で反応が進行した。2-置換-1,3-ジオキサン-5-オン誘導体より得られた軸性キラリティー化合物は、不斉転移反応による中心性キラリティー化合物への変換が可能であることから、本反応は不斉HWE反応の新たな方向を示すものと言える。
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