研究概要 |
(1)2-(4-vinylbenzyl)-propane-1,3-diol(1)とtetracyanoethylene(TCNE)からスチレン構造を有するdicyanoketene acetal(DCKA)(2)を合成した。このモノマーとethyleneglycol dimethacrylate(EGDMA)との共重合により、高分子体(poly-DCKA)(3)を通常の溶媒に不溶な粉末として得た。 (2)poly-DCKA(3)は触媒量(基質に対してDCKAとして0.2当量)でMeCN中、加温条件下(60℃)、芳香族、飽和、α,β-不飽和アルデヒド、ケトンのdimethyl acetal類とシリル型炭素求核剤(TMS-CN,Ar-C(=CH_2)O-TMS)との向山アルドール反応を促進することが判った。 (3)poly-DCKA(3)は触媒量(基質に対してDCKAとして0.2当量)でMeCN中、加温条件下(60℃)、イミン類とケトンやエステルのenolsilyl ether類とのMannich反応を促進することが判った。この触媒はアルデヒド、アミン、シリル型炭素求核剤の存在下、Mannich型三成分連結反応を優先的に促進させることも判った。 (4)poly-DCKA(3)の触媒量(基質に対してDCKAとして0.2当量)を用い、アルコール類やアルデヒド、ケトン類のアセタール型保護基の除去やアルコールのsilyl ether類の官能基選択的脱保護の触媒としての有効性を調査した。その中で、これらの脱保護反応での水系溶媒中(CH_3CN/H_2O混合溶媒又は水単独)、単分子触媒であるdicyanoketene ethylene acetalやmonomer-DCKA(2)に比べてpoly-DCKA(3)は極めて高い触媒活性、換言すれば正の高分子効果が観察された。 (5)上記(2),(3),(4)のいづれの反応においてもpoly-DCKA(3)は簡便な操作で回収でき、活生の低下をきたすことなく数回の再使用に耐えることが判った。
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