研究概要 |
報告者は,自身が先に開発したニッケル触媒による一段階多成分連結(タンデム)反応についての新たなる展開を目指して,この反応の不斉化すなわちエナンチオ選択的な多成分連結反応の検討を行った.その結果,ニッケルとアルミニウムフェノキシドとの複合触媒系に対し光学活性単座オキサゾリンを配位子として用いたときに,エノンとアルキンとのエナンチオ選択的な環化三量化反応が進行し,最高58%ee(鏡像異性体過剰率)で環化付加体が得らることを見出した.一方,これまでに報告されたいる触媒的不斉反応において利用されてきた光学活性ホスフィンあるいはビスオキサゾリンをこの反応の配位子として使用したところ,エナンチオ選択性の発現はほとんど見られなかった.更に興味深いことにこの単座オキサゾリンを用いた環化付加反応は付加体の位置選択性を完全に制御できることが明らかになった.これらの結果は,昨年度において報告者が示したニッケル触媒存在下でのクロロトリメチルシランとエノンとアルキンおよびジメチル亜鉛との分子間不斉タンデムカップリング反応の結果と合わせて,シンプルなモノオキサゾリンの遷移金属触媒反応の配位子としての利用に対し新たなる可能性を提示するものである.
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