研究概要 |
ホヤ類より単離されたlepadirormineおよびfasicularinは、いずれも抗腫瘍活性を示すアルカロイドであり、それぞれ3環性推定構造式が提出されているが、絶対配置はいずれも未決定であり、これまで全合成も行われていない。本研究は、アシルニトロソ化合物の分子内ヘテロDiels-Alder反応を共通の基本戦略として両アルカロイドを立体選択的に全合成することを意図して行われた。 初めに、ジエン部分のハロゲン置換の有無により分子内アシルニトロソD-A反応の立体経路を制御しB/C trans-及びB/C cis-付加体をそれぞれを立体選択的に得る方法を確立した。 次いでB/Ctrans-付加体を用い、(±)-fasicularinの最初の全合成を達成することができた。 さらに、B/C cis-付加体よりlepadiformine提出式の合成も達成した。しかし本合成品のスペクトルデータは、天然lepadiformineについて報告されているスペクトルデータとは異なっていることから、天然lepadiformineの提出構造式は誤りであることを明らかにした。 また、天然lepadiformineの構造としては、trans-パーヒドロピロロキノリン構造を有する4種の立体異性体のうち、C-3位とC-5位の置換基がそれぞれ3α,5αあるいは3α,5βの立体配置を有する化合物が有力であると考えられたので、B/C trans-付加体より両化合物の合成を行った。その結果、3α,5β体の塩酸塩が、天然標品とスペクトルデータが完全に一致したことから、(±)-lepadiformineの最初の全合成を達成するとともに、天然lepadiformineの相対立体配置を確定することができた。
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