研究概要 |
本研究は,遺伝子と医薬品との相互認識機構の解明を大命題とし,第1の課題として[5'-^<13>C]DNAと医薬品との相互認識機構の解明,第2の課題として,NMR法を用いた解析において有用な高立体選択的或いは,位置特異的な安定同位体標識化ヌクレオシド類の効率的合成法の開発を目的とした.第1の課題では[5'-^<13>C]DNAの^1H-13C HMQCを測定した結果7残基を容易に帰属でき,^1H-^<13>C HMQC-NOESYからはC5'-H1'のクロスピークが明確に観察され,この[5'-^<13>C]DNAは核酸の5'位周辺の構造解析に有用であることを明らかにした.さらに[5'-^<13>C]DNAとTallimustine(distamysin誘導体)との相互認識の解明では,C5'-H1'のクロスピークが観察され核酸の5'位水素の関連を確認した.現在まで核酸とdistamycin誘導体との認識時の5'位周辺の構造に関しては未報告であったが,今後の核酸の糖-リン酸エステルバックボーンの構造解析および医薬品との相互作用の解析に[5'-^<13>C]DNAが大きく貢献できることを示した.第2の課題では,高立体選択的[5'-^2H]ヌクレオシドの合成過程において,立体選択比5R/5S=12/88のD-[5-^2H]リボフラノース誘導体を,また高立体選択的2'-デオキシ[2'-^2H]グアノシン(d[2'-^2H]G)の合成法の開発では菌を用いた(2'R)-d[2'-^2H]Uの変換により,>99:1の相当するd[2'-^2H]Gを得ることに成功した.[3'-^<13>C]ヌクレオシド誘導体の合成法の開発においては,その合成の1過程であるアリルN-フェニルカルバメートのAD反応においてAD-mix-βを用いると,(S)-体のグリセロール誘導体が,また,AD-mix-αでは(R)-体のグリセロール誘導体がそれぞれ不斉収率99%ee以上(収率99%)で得られる方法を確立した.これにより糖や核酸だけではなく様々な生物活性物質の重要な合成中間体となる(R)-および,(S)-グリセロール誘導体の新規な高立体選択的合成法の開発を達成した.
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