研究概要 |
先の研究により我々は,ユリ科Ornithogalum saundersiae鱗茎より各種悪性腫瘍細胞に対して強力な増殖抑制活性を有する新規アシル化ステロイド配糖体(OSW-1)を見出した.本研究では,上記結果を踏まえ,OSW-1誘導体を合成するとともに近縁植物よりOSW-1類縁物質を探索し,構造活性相関を検討して活性発現部位を明らかにする一方,抗腫瘍活性物質を高等植物のステロイド配糖体成分に絞って探索し,単離された化合物の細胞毒性,抗腫瘍活性スペクトルと構造活性相関を検討した. 1)Ornithogalum saundersiae, O.thyrsoides, Galtonia candicansの各鱗茎より,計19種のOSW-1類縁化合物単離した他,5種の誘導体を合成し,それらのHL-60ヒト急性前骨髄性白血病細胞に対する細胞毒性活性を検討した.その結果,構造活性相関に関する新知見を得た.強力な活性の発現に必須な16位のアシル化糖の役割については現在のところ全く不明であり,この役割を明らかにすることが新しい作用機序を有する抗癌剤の最終的な創製に繋がるものと確信される. 2)ユリ科Galtonia candicans鱗茎より,HL-60細胞に対して強力な増殖抑制活性を有する2種の位新規ステロイド配糖体(1:galtonioside A;2:candicanoside A)を単離し,それらの構造を明らかにした.さらに,1,2のヒト培養癌細胞パネルを用いた抗癌剤スクリーニングを行なったところ,differential cytotoxicityを示し,乳癌,脳腫瘍,小細胞性肺癌に対して強い選択性が認められ,そのFinger Printは既存の抗がん剤と類似性を持たず(COMPAREプログラムにおける相関係数は0.5以下),新しい作用機序を有する腫瘍細胞増殖抑制活性物質と考えられた. 3)スピロスタノールならびにフロスタノール配糖体(ステロイドサポニン)類の細胞毒性についても検討し,構造活性相関を明かにした.
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