研究概要 |
生理活性ステロイド類は比較的複雑な側鎖部分を有するとともにその側鎖部分が生理作用発現に重要な役割を果たすことが知られている。本研究においては、2-フリルメチルエーテル類のWittig転位を鍵反応に用いた生理活性ステロイド類の側鎖部分の立体選択的構築法を検討したところ、エクジソン,ウィザノリド,ブラシノリド及び海産性ステロイドの側鎖部分の20及び22位の立体化学を含めた骨格合成に成功した。すなわち、(17E)-16α-フルフリルオキシ-6β-メトキシ-3α,5-シクロ-5α-プレグ-17-ネンをWittig転位に付すと、反応は立体選択的に進行し、(20S,22S,23Z,25Z)-23,26-エポキシ-22-ヒドロキシ-6β-メトキシ-3α,5-シクロ-27-ノル-5α-コレスタ-16,23,25-トリエンを与えた。一方、幾何異性体である(17Z)-16α-フルフリルオキシ-5α-プレグ-17-ネン誘導体からは20-エピ体が生成した。これに対して、(17E)-及び(17Z)-16β-フルフリルオキシステロイドを転位反応に付すと、それぞれ(20R,22R,23Z,25Z)-体及びその20-エピ体が生成した。 軟体サンゴPseudopterogorgiaより単離されたシュードプテラン型ジテルペンであるシュードプテロリドは12員環性のフラノテルペンであり、細胞毒性を示すことが報告されている。これらの合成においては2組のホモアリルアルコール部位の立体化学の制御が重要な課題となる。本研究では、環状フルフリルエーテルの分子内[2,3]Wittig転位反応によりanti-ホモアリルアルコール単位の立体選択的合成に成功した。すなわち、(5E)-5-メチル-3,16-ジオキサビシクロ[11.2.1]ヘキサデカ-1(15),5,13-トリエンをWittig転位に付すと、反応は高い選択性で進行し、anti-ホモアリルアルコールである(2R^*,3R^*)-3-イソプロピル-13-オキサビシクロ[8.2.1]トリデカ-1(12),10-ジエン-2-オール及びその3-エピ体がそれぞれ約9:1の比で得られた。今後、(2E,11E)-3,12,17-トリメチル-5,14,19-トリオキサビシクロ[14.2.1]ノナデカ-1(18),2,11,16-テトラエン-7-オンを合成し、Wittig転位によりシュードプテロリドのキラル合成を行う予定である。 光学活性フルフリルエーテル類のジアステレオ選択的Wittig転位反応を検討したところ、その不斉転写は完全に保持されることから、その有用性を確認した。
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