研究概要 |
本研究は、アリールラジカルからα-アシルアミノラジカルへのラジカル移動及びそれに続く環化反応を多官能基化された化合物の合成に応用するために、その一般性に関して検討を行い、さらにこの反応を鍵反応とする生理活性アルカロイドの合成を目的としている。本研究期間中に得られた成果を以下に示す。 1.9-azabicyclo[3.3.1]nonaneの位置選択的高収率合成法の開発:2位に置換基(methyl基またはmethoxycarbonyl基)を有する1-(o-iodobenzoyl)-2-[4-(trimethylsilyl)but-3-yny]piperidineのラジカル移動・環化反応は6-exo-dig型で選択的に進行し、いずれの場合も9-azabicyclo[3.3.1]nonane誘導体が定量的に得られた。一方、2位に水素原子を有する同様なラジカル前駆体の反応でも、9-azabicyclo[3.3.1]nonaneが収率良く(65%)得られたが、同時にhexahydropyrido[2,1-a]isoindol-6-one(23%)が副生することも分った。これは1,5-ラジカル移動の段階で2位にα-アシルアミノラジカルが生じたためであり、アリールラジカル生成時のアミド回転異性体の分布に起因すると考えられる。また、環化成績体を化学変換することにより9-benzoyl-1-methyl-9-azabicyclo[3.3.1]nonan-3-oneへと効率良く導くことができた。これよりベンゾイル基を除去すればeuphococcinineの合成が達成される。 2.2-azabicyclo[3.2.1]octane及び2-azabicyclo[3.3.1]nonane(morphan)の新規合成法の開発:1-(o-iodobenzoyl)-4-[3-(trimethylsilyl)prop-2-ynyl]piperidineのラジカル移動・環化反応では5-exo-dig型環化反応に由来する2-azabicyclo[3.2.1]octane誘導体が85%の収率で得られた。一方、4-[4-(trimethylsilyl)but-3-ynyl]-congenerの反応では6-exo-dig型環化成績体2一azabicyclo[3.3.1]nonane(morphan)及び還元成績体がそれぞれ20%及び75%の収率で得られ、還元反応が優先的に進行することが分った。 3.テトラヒドロイソキノリン誘導体のラジカル移動・環化反応:2-(o-iodobenzoyl)-1-[3-(trimethylsilyl)prop-2-ynyl]-1,2,3,4-tetrahydroisoquinolineのBu_3SnH-AIBN条件下でのラジカル環化反応により6,7,8,9-tetrahydro-5H-benzocyclohepten-5,8-imineが95%の収率で得られた。また、1-[4-(trimethylsilyl)but-3-ynyl]congenerの反応では5,6,7,8,9,10-hexahydrobenzocycloocten-5,9-imineが65%の収率で得られた。 4.モルホリン誘導体のラジカル移動・環化反応の検討:4-(o-iodobenzoyl)-5-[4-(trimethylsilyl)but-3-ynyl]-morpholin-2-oneのBu_3SnH-AIBN条件下でのラジカル環化反応を検討したが環化成績体は得られなかった。これには中間体ラジカルのラクトンカルボニル基による安定化の関与が示唆される。
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