研究概要 |
これまでグリコサミノグリカンの構造と分布,生理的な役割を解明することを目的として検討を行ってきたが,幸運にも韓国,アメリカ合衆国の著明な研究者との共同研究によって全く新しいグリコサミノグリカンの発見に貢献することができた.さらに,その生物活性の解明においても,構造と機能を結びつけるための方法論の確立に貢献した.さらに新規のグリコサミノグリカンが細胞増殖因子との結合活性を有し,細胞増殖と分化に少なからず影響することを証明し得た.今後この非常に珍しいアフリカマイマイが産生するグリコサミノグリカンの新しい生理活性を明らかにすると共に,新しい医薬品への応用・開発がおおいに期待できる. 今回申請者が用いたアフリカマイマイ由来のグリコサミノグリカンは,申請者らが1995年に新しく見出した新規酸性多糖である.Journal of Bilogical Chemistryに発表以来,国内では愛知医科大学木全弘治教授らのグループと共同で,硫酸基転移酵素の基質としての可能性を探索するプロジェクトが進行中であり,また国内の複数の試薬供給会社,製薬会社からパテントに関する問い合わせがあり,現在米国,韓国において申請中である.また,米国ハーバード大学医学部小児科病院Prof.Merton Bernfieldらとの共同研究によって,ヘパラン硫酸と増殖因子との親和性,すなわち活性調節機構の解明を目指して種々検討を行い,新規グリコサミノグリカンはヘパラン硫酸と共通の構造を持つため,あらゆる角度から類似の効果をもつことが明らかになった.一方,大腸菌細胞壁にはグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンからなる多糖が存在するが,スエーデンのProf.Ulf Lindahlはこの多糖を化学的に硫酸化し,申請者らと同様の戦略で検討を行っており,情報を交換し合ってその生理的な活性についても検討を進めている. 以上のように,細胞増殖因子の活性調節機構を解明するために国の内外を問わず数多くの研究者が努力を重ねており,今回の助成で得られた結果は国の内外で注目を集めている.
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