研究概要 |
すべての生物は通常の環境下起こる様々なDNAの損傷を修復する多様な機構を備えている。損傷塩基を認識しそのN-グリコシド結合を切断、損傷塩基を除去するDNAグリコシラーゼもその1つである。我々は3-メチルアデニンDNAグリコシラーゼII(AlkA)のX線構造解析を行い、DNAグリコシラーゼスーパーファミリーの存在を見いだした。本研究の目的は、大腸菌AlkA(反応を起こさない変異型D238N)と基質DNAとの複合体並びにAlkA-基質ヌクレオシドの3次元構造をX線結晶構造解析法で決定し、原子レベルの正確さでDNAグリコシラーゼスーパーファミリーのメンバーが如何に損傷DNAを特異的に認識し除去するのかを解明することである。 AlkA変異型D238Nを純度よく精製し、中心にミスマッチ塩基対をもつDNAオリゴマーとD238Nの複合体結晶を得るため、結晶化条件とDNAオリゴマーの配列の検討を行っている。 AlkA野生型とメチル化プリンヌクレオチド複合体の結晶を既に結晶化条件の確立した方法で調製した野生型結晶にメチル化プリンヌクレオチドを浸漬させて調製し、高エネルギー加速器研究機構の放射光(PF)で3種のX線回折データを測定し、すべて1.8Å分解能の良好なデータを得た(それぞれR_<merge>:2.2%,5.2%,4.1%;Completeness:88.4%,94.2%,93.6%)が、現在のところメチル化プリンヌクレオチドに相当する電子密度が観測できていない。 AlkA結晶の1.5Åの高分解能での精密化、並びにDNAグリコシラーゼファミリー間で異なる酵素活性を発現するアミノ酸残基の位置の同定と酵素活性の改変に成功した。これらの成果から、本DNAグリコシラーゼスーパーファミリーの多様な基質特異性と異なる酵素活性を発現する立体構造上の理由をうまく説明できた。
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