研究概要 |
胆汁酸生合成における側鎖開裂反応(β-酸化)には肝ペルオキシソーム内に存在するacyl CoA oxidaseenoyl CoA hydratase/dehydrogenase(bifunctional enzyme)及び3-oxoacyl CoA thiolaseが関与するが,これら各酵素の基質にそれぞれ対応する胆汁酸生合成中間体CoAエステルを化学合成した。また,各酵素の特異性を詳細に検討するために側鎖構造(側鎖炭素数の異なる誘導体,側鎖メチル基を除いた誘導体)及び母核水酸基数の異なる誘導体を合成した。 次いで、上記合成標品を用いて胆汁酸生合成中間体であるCoAエステルの直接的な分析法を確立した.CoAエステルは熱的,化学的に不安定であり,また,中間体の立体異性体の分離も考慮してHPLCによる一斉分析法を開発した.また,超微量にも対応を可能とするための高感度な分析法として蛍光検出(CoAエステルを加水分解した後ラベル化を行う)によるHPLCの分析法の開発も併せて行った。次いで,酵素反応中のCoAエステルの加水分解に伴う遊離型C27-胆汁酸の定量法として分離能に優れたキャピラリーGCによる簡便な分析法の開発を行った.さらに各種体液中に存在する生合成中間体の分析に適したGC/MSによるC27-胆汁酸の微量一斉分析法の開発を検討し,生体試料中(特に胆汁酸代謝異常症患者)の胆汁酸生合成中間体の分析も検討した。 その結果,bifunctional proteinは2種類知られているが,胆汁酸生合成に関与しているbifunctional proteinはD-3-hydroxyacyl-CoA dehydratase/dehydrogenaseであることが判明した.また,この酵素は胆汁酸側鎖メチル基の存在により特異性が異なることが判明した.さらに,その立体化学的特異性は,非常に高く,水和物として24R,25R-異性体のみを与え,また,酸化反応の基質として24R,25R-異性体のみを基質とすることが判明した.さらに,胆汁酸生合成における最終反応の酵素(oxo-acyl-CoA)の本体はsterol carrier protein Xであることを明らかにすることが出来た.
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