研究概要 |
1991年以降,トリプレットリピートの伸長という動的突然変異が見いだされ,現在までに14種類のトリプレットリピート病が報告されている.本研究の目的は,in vivoにおけるトリプレットリピートのクロマチン構造の特徴を明らかにして,発症機構と密接に関係しているリピートの伸長機構を解明することである.これまでに,トリプレットリピートのヌクレオソーム形成はin vitro再構成系によって評価されてきたが,真核生物染色体におけるリピートの構造と動態についてはほとんどわかっていない.まず,出芽酵母ミニ染色体をベクターとして,ヌクレオソーム形成をin vivoで評価できるアッセイ系を構築した.この系を用いて,(CTG)_n(n=12,30,59,80)及び(CGG)_<12>,(GAA)_<12>をヌクレオソーム中央またはフリー領域に挿入して,ヌクレオソーム形成に及ぼす効果を調べた.(CTG)_<12,30,59>をヌクレオソームフリー領域に挿入すると,いずれの場合も.ヌクレアーゼ感受性領域が消失して,その位置に新たなヌクレオソームの形成が促進された.一方,(CGG)_<12>をヌクレオソーム中央部位に挿入すると,ヌクレオソームのポジショニングが破壊された.(GAA)_<12>については,近傍のヌクレオソームポジショニングに変化は見られたが,ヌクレオソーム形成に対しては阻害的にも促進的にも働かなかった.さらに,レポーターlacZ遺伝子の発現に及ぼす影響について調べたところ,UASのないプロモーターに(CGG)_<12>を挿入すると,転写の活性化が起こることが示された.この結果は,(CGG)_<12>がヌクレオソーム形成を阻害することとよく対応している.以上,本研究において,トリプレットリピートがin vivoでクロマチン構造と遺伝子発現に影響を及ぼすことをin vivoで明らかにすることができた.
|