研究概要 |
プロテオグリカンは細胞増殖因子やサイトカインの活性制御を通じて血管内皮細胞の増殖や血管新生に影響を及ぼす。結合組織増殖因子(CTGF)は内皮細胞の増殖や血管新生を促進する増殖因子であるが,プロテオグリカン合成の調節への関与は知られていない。そこで,培養内皮細胞を用いて,CTGFによるプロテオグリカン合成の調節を検討した。 コンフルエントおよびスパースに播種した培養ウシ大動脈血管内皮細胞を調製し,ヒト組み換えCTGFで処理後,プロテオグリカンの特性を調査した。 (1)CTGFは細胞密度が低い場合は培地へのグリコサミノグリカンの蓄積を有意に減少させたが,そのような変化は細胞密度が高い場合には,観察されなかった。 (2)DEAE-Sephacel陰イオン交換クロマトグラフィーで低細胞密度の内皮細胞から抽出した35S-硫酸標識プロテオグリカンを分離したところ,CTGFは培地に蓄積したコンドロイチン/デルマタン硫酸プロテオグリカン(CS/DSPGs)を減少させていることが示された。 (3)しかしながら,このCS/DSPGsのhydrodynamic sizeは,Sepharose CL-4Bによる検討ではCTGFによって変化していなかった。 (4)Sepharose CL-6Bによる分析の結果,このCS/DSPGsのグリコサミノグリカン糖鎖の長さもCTGFによって変化しないことが分かった。 (5)SDS-PAGEおよびWestern blot分析によるコア蛋白の分析の結果,CTGFは細胞密度が低いときに培地へのビグリカンの蓄積を減少させるが,新たにデコリンを蓄積させることが示された。 以上の結果から,内皮細胞において,CTGFが細胞密度依存的にCS/DSPGsの小型分子種ビグリカンおよびデコリンの合成を調節することが明らかとなった。
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